クリストファー・スミス監督『ゴッド・オブ・ウォー 導かれし勇者たち』(Black Death、2010年イギリス、ドイツ)
中世主義や新中世主義に関して作品を探していたところ発見した映画。
ショーン・ビーンやエディ・レッドメインが主演を務めているとはいえB級かな、と期待せず、資料として見ておこうとしたが、これも見てよかった。
せっかく原題が「黒死病」(Black Death)で中世ヨーロッパ社会を揺るがした一大事を中心とするキーワードなのに…。
邦題が邪魔している気が。
コロナやパンデミックでなくとも、注目されても良かった映画では。
- 14世紀、中世イギリスの暗さ
- というか暴虐性、残虐性
- 信仰が駆り立てる武勇と自己犠牲
- キリスト教と異教の信仰心
- 少しずつ仲間が減っていくRPG冒険感
など深く人間心理を暴き出している。
ネクロマンサー討伐隊に加わる修道士オズモンドのなよっとした感じが、最後の場面のコントラストを際立たせている。
信仰心は屈折し、こうも人を変えるのかと。
敬虔な神の騎士として、病気の蔓延や異教徒からの要求にも、かたくなにキリスト者であろいまた神の騎士として敬虔な信仰心もこの物語を深くさせている。
その一方、拷問描写はえぐい。『ロード・オブ・ザ・リング』でボロミアを演じたショーン・ビーンにまでこうさせるか、と。いやボロミアだからこそか。
この物語の根本は、黒死病が蔓延していない村である。
ここに魔術師がいるという設定だが、結局、湿地帯で、到達しづらくて、隔離されたところだったから感染症が届いていないところだった、という何ともシンプルな理由。
一生懸命その討伐の理由を宗教的に正当化しようとするが、コロナ渦を経験した我々はうるさい。
隔離、が一応効果があったことを。
そこには独自の文化があり、周りから見れば特殊であるが、平和に暮らしていた。
そこに感染症をもった一団が「死」を持ってくる。
これはイギリス国内の話であるが、グローバルな現代にも通ずる。
未開の地にわざわざ入っていき、そこの文化を壊す。
トラウマを抱えた生き残りは、持ち前の信仰心をあらぬ方向へ向かわせてしまう。
黒死病を扱った映画を見た覚えがあるが何か思い出せないモヤモヤ感
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