『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』の米国の中の英国

映画『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』90秒予告【HD】2016年11月23日公開

デヴィッド・イェーツ監督『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』(Fantastic Beasts and Where to Find Them、2016年、イギリス、アメリカ)

 

『ハリー・ポッター』シリーズを原作とする作品群「魔法ワールド」(Wizarding World)の知識として見ておこうと思ったが、これまた良かった。

 

  • 1926年アメリカニューヨークにおけるイギリス
  • 法が守るのは国民か、団体か

 

ハリーポッターのイギリス感がアメリカでどう表れるか、というテーマ。

 

1920年代、アメリカ

ときいて真っ先に浮かんだのが

 

F・スコット・フィッツジェラルド(Francis Scott Key Fitzgerald, 1896-1940)『グレート・ギャツビー』(The Great Gatsby、1925年)

 

『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』の世界の1年前に発表された作品で、ニューヨークが舞台となっている。

 

映画化も何度もされているが

映画『華麗なるギャツビー』予告編1【HD】 2013年6月14日公開

バズ・ラーマン監督『華麗なるギャツビー』(The Great Gatsby、2013年、アメリカ)

これが最近の映像化。

 

ニューヨークに移り住み証券会社で働き始めるニックと成功したかに見えるギャッツビーの話。

大恐慌前夜に盛大な生活をする富豪と彼らの闇あるいは影や傷を描く作品でもある。

合理と非合理

ビジネスを目的に集まってくる、缶詰工場職員でパン屋志望のジェイコブ・コワルスキー。

‘Kowalski’はポーランドで2番目に最も使われている名字。

1880-1920年の間にアメリカ、イギリス、カナダで形成された家系でもある。

経済大国に夢をもって集まる移民やその移民で形成されるアメリカの様子を冒頭から描いている。

動物を愛するニュート・スキャマンダーが、アメリカのビジネス感と対極をなすように描かれている。

コワルスキーの持つスーツケースには仕事道具のパン、ニュートのスーツケースには、動物世界。

スーツケース、ビジネスバッグは持ったことがあればわかるが、仕事道具が入っている世界。

魔法使いの仕事としては魔法世界を持つのは当然だが、

コワルスキー:物質、営利

ニュート:幻想、非営利

以上の対局がわかる。またこれを間違えるというのもアメリカとイギリス世界の交換性が出ている。

非魔法使いを表す言葉:

ハリーポッターのイギリス世界では「マグル」”Muggle”

アメリカでは「ノー・マジ」”No-Maj”

こういうところに、イギリス英語、アメリカ英語の違いもだしているのは細かい。

英国のエセックス大学と米国・ワシントンD.C.のジョージタウン大学で学んだ監督(David Yates)の感覚もよく出ているのだろう。

なんかこういう論が出ていないかと調べていたところ

 

池田純一. “再合理化される現代世界:『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』 論.” 新潮 114.2 (2017): 206-213.

 

早速あった。現代の「合理化」論は面白そう(まだ読んでない)。

 

役者としてのエディ・レッドメイン

エディ・レッドメイン(Eddie Redmayne)のイギリスのシャイで不器用なイケメン像が、動物を愛する魔法使いとマッチし、アメリカのマッチョゴリゴリ肉食系男子との違いを際立たせている。

見た映画をふと振り返ってみると

 

2007年、『エリザベス:ゴールデン・エイジ』(Elizabeth: The Golden Age

2008年、『テス』(Tess of the d’Urbervilles

2010年、『ゴッド・オブ・ウォー 導かれし勇者たち』(Black Death

2010年、『ダークエイジ・ロマン 大聖堂』(The Pillars of the Earth

2014年、『博士と彼女のセオリー』(The Theory of Everything

 

以上出ていて、それぞれ良い味を出していた俳優さんだった。

 

1920年代アメリカといえば、

 

バリー・レヴィンソン監督『ナチュラル』(The Natural、1984年、アメリカ)

原作バーナード・マラマッド(Bernard Malamud、1914 1986)『ザ・ナチュラル』(The Natural 、1952年)

 

これも野球を題材にした作品だった。

 

あれ、脱線しまくってしまった。

他にも考察すべきポイントはいっぱいありそうだけどまた今度

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